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第14回天文宇宙検定 受験者データおよび講評

2023年11月20日に開催した第14回試験について、合格率・平均点などの受験者データと、検定委員会による講評をアップしました。
「第14回天文宇宙検定解答速報」と合わせてご覧ください。(第14回解答速報の公開は終了しました)

各級合格率・最高得点・平均点

試験問題の難易度

1)正答率の高かった問題

最も正答率が高かった(やさしかった)問題を1位として、各級の上位10位までを並べた。
「問No.」は、試験出題番号を表す。詳細は後述。

2)正答率の低かった問題

最も正答率が低かった(難しかった)問題を最下位に、各級の正答率が低い順に10位までを並べた。
「問No.」は、試験出題番号。
ちなみに、1・4級の出題数は全40問、2・3級は全60問が出題された。詳細は後述。

4級

合格率が80%を切ったのは第11回以来のこと。近年、受験者の低年齢化が進んでおり、10歳未満の受験者が4級全体の23.8%を占めた影響が否めない。年代別の合格率をみると10歳未満は63.5%と全体の中では低調であるが、4級は受験対象年齢を5年生(11歳)以上と想定しているので、この数字はむしろ高いといえるかもしれない。
点数分布をみるとピークは70~79点が一番多く、4級の全受験者の28.5%。合格点に及ばなかった50点台が全体で15.1%であった。

4級試験で正答率が9割を超えた問題は9問あった。なかでも正答率の高かった問題から紹介しよう。いずれも天体の分類や観測の際の注意事項など基本的な知識を問う問題である。出題範囲である4級テキストを精読していれば正答を選ぶのは容易だろう。
【問38】(正答率98.1%)下の写真(太陽の画像)のように、太陽の表面にしみのような模様が見みえることがある。これは何か。
【問21】(正答率97.9%)天体望遠鏡を買ってもらったので、さっそくいろいろなものを見たいと思う。しかし、そのままで見てはいけないものが1つある。それはどれか。
【問1】(正答率97.5%)地球は北極と南極を通る直線を軸にして1日1回転している。この回転のことを何というか。
【問18】(正答率95.2%)次の惑星のうち、環がないものはどれか。
【問15】(正答率92.6%)宇宙にはいろいろな種類の天体がある。地球のまわりを回っている月は何という種類の天体か。
【問5】(正答率92.4%)次のうち、一番明るい星はどれか。選択肢は、①0等星、②3等星、 ③-3等星、 ④-1等星。
【問10】(正答率92.1%)オーロラについて正しいものはどれか。
【問17】(正答率92.1%)日本の学校が夏休みになって、オーストラリアへ旅行に行くことになった。そのときのオーストラリアの季節はどれか。
【問8】(正答率90.1%)ほうき星とも呼ばれるものはどれか。

正答率の低い問題は順に以下のとおり。どれも知識に対して、いまひとつ深い理解が求められる。
【問32】(正答率32.9%)太陽系で一番ゆっくり自転している惑星はどれか。選択肢は、①水星、②金星、③木星、④土星。太陽系惑星のなかで、金星の自転が他の惑星とは逆向きで、1回転に243日かかるという特徴に気づけるかどうかがポイント。
【問12】(正答率38.4%)次の図の星のならびは、12個ある誕生星座のうちの1つである。なんという星座か。やぎ座は秋の星座。2等星以上の明るい星がなくあまりなじみがなかったかもしれない。
【問37】(正答率40.1%)昔の人びとが「いざよい」の月と呼んだ月はどれか。日本人が月を呼びならわすさまざまな名前は、それぞれの由来がある。問題の「いざよい」とは「十六夜」と書く。「いざよい」とは、ためらいという意味であり、日没とともに昇ってくる満月(十五夜)の翌日の月、十六夜を、ためらいがちに昇る月ということから「いざよい」と呼ぶようになったと言われる。現代人からすると、みやびやかな響きを感じさせる、覚えておきたい言葉である。
【問22】(正答率40.7%)次のうち、地上からの高度が低い順に正しくならんでいるものはどれか。正しい選択肢の並び順は、高度の低い方から、オゾン層、流れ星、オーロラ、国際宇宙ステーションの順。どこからが宇宙なのかを考えたとき、どの高度に何があるのかは知っておきたい知識であり、4級では定番ともいえる問題であるが、正答率は4割にとどまった。

3級

3級は中学で学ぶ天文学の知識を基準としている。受験者層は、前回同様、10代・20代が多かった(3級全受験者の53.6%)。10歳未満男性の合格率は90.0%と高かった。全体の得点分布は60~69点台にピークがあった(26.7%)。3級全体の合格率は77.4%と8割には届かなかったものの、59点以下は22%で、30歳以上では合格率は80%を超えている。

正答率が9割を超えた問題は、次の7問。
【問22】(正答率94.5%)図は天の川銀河の側面を表している。太陽系はどこか。天の川銀河のすがたも少しづつ明らかになってきており、新しい研究成果にも期待が膨らむ昨今だ。
【問20】(正答率92.4%)史上初めて、人類を月に着陸させることに成功した宇宙船はどれか。選択肢が、①ルナ9号、②アポロ11号、③ボストーク1号、④ひてん、と取捨選択しやすかったことが幸いしたようだ。
【問9】(正答率91.9%)木星を表す惑星記号はどれか。惑星記号は定番問題のひとつ。由来をおさえると覚えやすい。
【問27】(正答率91.7%)冬の代表的な星座であるオリオン座の一晩の動きを正しく表しているのはどれか。一晩で何度、どの方角へ、どう動くかはしっかり理解しておこう。
【問41】(正答率91.7%)中国由来の呼び方で、太陽に対して月のことを何というか。選択肢は、①太白、②太陰、③太極、④太衝。日本の太古の宇宙観は、中国伝来の宇宙観が深く影響している。
【問12】(正答率91.2%)東京で月が下図のように見えた。同じときにオーストラリアのシドニーで月はどう見えるか。なお、各図の上方向が天頂方向、下方向が地平線方向とする。これも定番問題。南半球では月の見え方が上下左右逆で、左右逆方向から欠ける。
【問37】(正答率90.3%)次の惑星についての記述のうち、間違っているものはどれか。①海王星の大部分は氷でできている②火星は木星型惑星に分類される③金星のマントルは高温の岩石である④土星は木星型惑星に分類される。太陽系の惑星の構造「地球型惑星」「木星型惑星」「天王星型惑星」の種別と特徴も頻出問題のひとつである。

正答率が3割を切ったの問題は以下の5問。
【問50】(正答率17.2%)星の天球上の位置を決める座標系のうち、多くの座標系は星とともに日周運動をするが、次のうち日周運動をしない座標系はどれか。①地平座標、②赤道座標、③黄道座標、④銀河座標。座標系についての問題は毎回正答率が低いが、各々が何を基準として、何を観測するのに適しているかを区別して覚えておけば、理解は深まる。
【問18】(正答率19.8%)次の天体の中で、名の由来であるギリシャ神話の神が互いに兄弟ではないものはどれか。①木星、②天王星、③海王星、④冥王星。ギリシャ神話の本はたくさん出版されているので、読んでおくと理解が深まるだろう。ちなみに、オリオンはポセイドンの子である。
【問7】(正答率20.1%)現在のOctober(10月)は、古代ローマ時代は8番目の月だったが、10月になった理由は何か。暦と天文学も切り離せない問題だ。権力者カエサルによって月の名前がずれて今に至るという、理不尽なお話である。
【問60】(正答率24.6%)図は宇宙エレベーターを表したものである。地球の中心から静止軌道ステーションまでの距離いくらか。静止軌道といえば赤道上空の高度約3万6000㎞の軌道であるが、この問題は地球の中心からの距離を問うていることを忘れてはいけない。
【問19】(正答率24.8%)2014年に公開されたアメリカのSF映画で、現実では直接検出に成功したことが2016年に発表された「重力波」を使った信号伝達が出てくる作品はどれか。宇宙をテーマにした作品も公式テキストでいくつか紹介されている。宇宙の知識があって鑑賞すれば、楽しみ方も変わってくるだろう。

■2級

今回の2級合格率は44.6%、平均点は64.9点であった。過去14回の2級の平均点は62.7点なので、例年と大きくは違わない。年代別に合格率をみると60・70代以上でそれぞれ60%を超えている。最も受験者が多かったのは10代男性。次いで、20代男性、50代男性と続く。2級受験者は例年6割が男性である点も、今試験では変わりがなかった。

正答率が8割を超えた問題は13問あったが、なかでも正答率の高かった問題は以下のとおり。
【問4】(正答率92.5%)次のHR図で白色矮星の位置として当てはまるものはどれか。ヘルツシュプルング・ラッセル図についての問題は2級では定番であり、図中の恒星のグループについて理解することは基本ともいえる。
【問40】(正答率91.8%)スペースコロニーは対称軸のまわりに回転させるようになっている。この回転で、何を得ようとしているか。①大気、②水、③日照、④擬似重力。スペースコロニーの疑似重力発生のしくみは、ガンダムなどのアニメで知られた事案ということもあり、正答率が高かった。
【問2】(正答率87.8%)太陽黒点について正しく述べたものはどれか。①大きいものは地球の数倍の大きさがある、②半暗部は比較的小さな黒点の周囲にしか見られない、③黒点は単独で現れるものがほとんどである、④黒点は周囲より磁場が弱い領域である。正答は①。太陽直径は地球直径の約109倍もあり、その表面の黒点も巨大である。
【問1】(正答率85.8%)宇宙の歴史における出来事を、古い順に並べたものはどれか。正答は、インフレーションの開始→宇宙の晴れ上がり→生命が発生する→ブラックホールの蒸発。宇宙開闢から消滅までに辿る道筋については、2級でよく問われる問題である。

正答率が低かった問題は以下のとおり。
【問48】(正答率22.1%)写真は8件の客星を記した古記録だが、どこが所蔵しているか。選択肢は、①宮内庁、②西園寺家、③冷泉家、④近衛家。正答は③冷泉家。世界的にみても貴重な文化的資料である。
【問33】(正答率25.8%)粒子の質量をm、回転半径をr、回転速度をvとすると、角運動量Lはどう表せるか。ケプラーの法則も2級では頻出問題のひとつであるが、ニュートンの万有引力発見につながる重要な法則なので、ケプラーの法則の意味はしっかり覚えておいてほしい。
【問52】(正答率30.6%)最大級の太陽フレアの1000倍大きなスーパーフレアが太陽で起こる可能性はどれくらいか。選択肢は①5000年に1回、②50万年に1回、③5000万年に1回、④50億年に1回。地球に壊滅的な影響を与えるといわれるスーパーフレアについては、その発生頻度が5000年に1回程度であろうといわれている。
【問31】(正答率31.2%)マルチバースの考え方において、インフレーション宇宙のレベルはいくつか。4つのタイプがあるといわれる多宇宙・マルチバースについては、どこかSFめいていて興味深い話題であるが、1章コラムからの出題ということもあって、正答率は3割にとどまった。
最後に、【問20】アミノ酸や核酸などの有機分子には、D型とL型がある。地球の生体はL型のアミノ酸だけを使っていることについて述べた文で間違っているものを選ぶ問題については、生命科学分野の学識経験者を交えて天文宇宙検定委員会で議論を重ねた結果、最新の研究知見では、生体内のD型アミノ酸の存在は広く認知されている事実であり、その機能について研究が進められているのが現状であるとの見解に達し、選択肢として挙げた「②生体はD型のアミノ酸を吸収することはできない」を正しいと断じることが困難であると判断するに至った。そのため、当該問題については、①と②を正答とした。受験された皆様には、あらためてお詫びを申し上げます。

■1級・準1級

今回の1級合格率は0.7%。最高得点は74点だった。平均点は43.4点で、過去平均47.6点を下回った。男女比でみると男性が85.8%と多かった。年代別には50代以上で5割を超えている。得点のピークは40~49点台が33.3%と最も多かった。1級試験問題の出題分野は、天文学のなかでも観測・理論についての知識を問う問題が6~7割ほどを占めており、残りは時事問題や宇宙開発・文学などの関連分野から出題される。テキストがないかわりに、参考書『極・宇宙を解く』から試験問題の4割程度が出題されているが、広い知見を問われる。なお、数題ほど出題される時事問題対策のため、近年の天文時事に目を通しておいてほしい。1級試験で60点以上で認定される準1級は、1級受験者のうち9.2%であった。

正答率が高かった問題は順に以下のとおり。参考書『極・宇宙を解く』からの出題は、やはり正答率が高かった。
【問38】(正答率83.0%)単位記号Cはどう読むか。①カンデラ②クーロン③ケルビン④セルシウス
【問18】(正答率75.9%)図は太陽のまわりの地球軌道を描いたものである。JWSTはこの図ではどこに設置されているか。第13回に引き続き、JWSTについての問題が出題された。
【問35】(正答率68.1%)ギリシャ文字の大文字と小文字の組み合わせで、間違っているのはどれか。ギリシャ文字については、『2・3級公式テキスト』・『極・宇宙を解く』にも記載がある。確認しておこう。
【問16】(正答率66.7%)太陽の表面温度はおよそ6000 Kで、そのスペクトル分布は波長がおよそ480 nmのところにピークをもつ。では、表面温度が2万4000 Kの恒星のスペクトル分布のピークの波長はどれくらいか。①240 nm ②160 nm ③120 nm ④80 nm(『極・宇宙を解く』(8節)からの出題)。
【問30】(正答率66.7%)天球全体は何srぐらいになるか。①約3 sr ②約13 sr ③約23 sr ④約33 sr(『極・宇宙を解く』(1節)からの出題)。

正答率が低かった問題は次が挙げられる。
【問2】(正答率7.1%)アメリカの学術団体は、今後10年間の天文学の将来計画の重要性を定めるための指針としてAstro2020というレポートを2021年11月に発表した。その中で提唱された3つの重要度の高い柱(priority area)に該当しないものはどれか。③銀河臣下と生態系として理解する研究を選んでしまった方が約7割であった。
【問40】(正答率12.1%)星座の「や座」(Sagitta)の略号として正しいものはどれか。①Sag ②Sat ③Sge ④Sgt
【問13】(正答率13.5%)持続時間が極めて短い電波現象が、2007年にオーストラリアの電波望遠鏡によってとらえられた。この電波現象によく似た波長の偽信号が発見されたが、その偽信号につけられた名称は何か。①LGM ②セイレーン③ペリュトン④ディンゴ。正答は③。
【問32】(正答率14.9%)海王星が発見されたのは1846年だが、それ以前に図らずも海王星の観測記録を残していた人物は誰か。①ティコ・ブラーエ②ガリレオ・ガリレイ③ユルバン・ルヴェリエ④ジョン・クーチ・アダムズ。③を選んでしまった方が約4割いたが、ルヴェリエは未知の惑星(海王星)の位置を予測したのみであって、観測したわけではない。

■総括

天文宇宙検定の公式テキストは2年ごとに改訂されているが、第14回検定時のテキストはすでに7回の改訂を経ており、一般的なテキストであれば完成度は十分に高くなって、改訂箇所など見あたらなくなるのが普通である。しかし天文分野に関しては別で、たった2年の間にも新しい発見や研究の進展があるため、テキストも改訂ごとに新しい内容が盛り込まれている。と同時に、新しい発見で間違いがわかった内容はもちろん、古びた内容など、同じ分量だけが削除されている。もし、改訂前の公式テキストや、2023年春に改訂された2023・2024年版などをお持ちの場合は、公式テキストを読み比べてみるのも面白いと思う。新しい知見をどんどん学ぶことも楽しいし重要なことだが、新しい観測などによって科学的知識がつぎつぎに塗り替えられていくことをリアルタイムで体験することも大変に意義があり、科学の有り様がよくわかり身に付くものだ。
さて、13回目に引き続き、2022年度の2回目の通算第14回目の検定試験だったが、受検者数や合格率など、全体的な傾向はさほど大きく変わっていない。しかしまさに上に書いたような実例が、2級の問20(D型とL型のアミノ酸)で起こった。出題委員と検定委員が不勉強であった点は申し訳ないが、このような確定していると思っていた“科学的事実”でさえ、ちょっと見過ごしている間に塗り替えられているのだから、科学(天文)はダイナミックに変化することがよくわかる。出題者や検定委員会のメンバーもまた、受検者や読者のみなさんとともに学んでいるのである。
近々、新しく改訂された2023・2024年版の公式テキストを用いて、第15回天文宇宙検定が実施されるが、実はD型L型問題は公式テキストでは十分に反映されていない。出版の前のタイムラグがあるためだが、こういうこともあるのはご寛恕いただきたい。それよりも戦々恐々なのは、新宇宙望遠鏡JWSTなどによる新しい結果がどんどん出始めていることだ。ALMA望遠鏡も活躍中だし、LIGO/VIRGO/KAGURAによって合体ブラックホールの数もどんどん増えている。出版前からテキストが古くなりそうである(笑)。また宇宙開発分野でも、試験機の打ち上げ自体は残念な結果に終わったとはいえ、次期主力ロケットH3の開発が進んでいる。さらに後一歩のところで月面着陸まではいかなかったようだが、日本の民間企業が月着陸に挑む時代になった。天文観測や宇宙開発ではしばしば欧米の成果に目が向きがちだが、実は日本も結構すごいのだ。日本人としては誇りをもちたいところだ。なでしこジャパンとか侍ジャパンみたいに、天翔るジャパンとか何か標語でも立てて、日本の宇宙開発を応援したいですね。

2023年4月吉日
天文宇宙検定委員会

読者からの質問

あとひと月ほどで、第15回の検定試験が開催されます。
試験対策は進んでいらっしゃるでしょうか?

テキストの内容については、誤植の指摘と併せて、
ご質問もいくつか頂戴しています。
ありがとうございます。

先日、4級テキストと問題集の内容について、電話でご質問をいただきました。
テキストの編著者にお尋ねして、ご回答を差し上げる約束でしたが、
当方の控えた電話番号でご連絡がつきませんでしたので、
以下に、ご回答申し上げます。ご本人様にご覧いただけるとよいのですが…。

【質問】
*******************************
4級テキスト・p41・上から2~3行目に、
「太陽は巨大なので中心の熱が表面に伝わるまで1000万年かかる。」
とあるが、4級問題集p52・Q16には、
「太陽の中心で発生した熱が太陽の表面まで伝わるには、
どのくらいかかるか。正答:100万年」となっています。
正しいのはどちらですか?

********************************

【編著者の回答】
たいへんよく勉強されていらっしゃいますね。
ご質問に回答申し上げます。

太陽の熱と光は、中心部からは瞬時に出て来られません。
太陽の中心で発生した熱や光は、パンパンにつまった太陽の中を
行きつ戻りつし合いしながら、表面に出てきます。

そして、その計算は見えない太陽の中がどうなっているのかを考えながら行います。
これは難しく、考え方によって10倍もの大きな差がでてしまいます。

100万年は間違いであるとも言えないのですが、
最近は1000万年くらいが良さそうとされているのです。

1000万年もかかるのはびっくりですよね。
毎日見えている太陽のことも意外と完全にはわかっていないのは、
おもしろいことと思いませんか?

公式テキストと問題集の記述に混乱が生じた原因は、
「100万年」と記載していた『4級・問題集』が2022年7月発売で、
その翌年の2023年3月に『4級公式テキスト』を発売する際、
「100万年」を「1000万年」に修正したのですが、
問題集に正誤表を入れるべきところを、見落としていました。
混乱をさせてしまい、申し訳ございませんでした。

ご指摘をいただきまして、誠にありがとうございました。
作成者側も間違いや見落としがあるので、
また何か気づいた点があれば、遠慮なく質問していただけると嬉しいです。

〇第14回試験問題へのご質問に対する回答

第14回試験問題について、いくつかのご指摘・ご質問を頂戴いたしました。ありがとうございます。

以下のとおり、回答申し上げます。
質問者からの文章は、一部を割愛させていただきました。ご了承ください。
なお、2級問8につきましては、正答が導き出せないことから、当該問題につきましては受験者全員を正解といたします。
また、問20の選択肢②につきましては、新しい知見が発表されてきていることを鑑み、
②を選択した場合も正答とします。
受験者の皆さまにはご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。

■2級・問8

【問題】
十干十二支(じっかんじゅうにし)について正しく述べたものはどれか。
①暦が50年で一巡りすることを還暦という
②十干十二支の組み合わせでは、60以上の数を表すことはできない
③十二支に動物名を当てているのは日本だけである
④真夜中を「ねの刻」というが、十二支とは関係がない

【正答】

【解説】
十干十二支で順序数をつくる場合、十干と十二支を「甲子」、「乙丑」、「丙寅」のように、それぞれ最初から1つずつ順に組み合わせていく。そのため組み合わせは60通りしかなく、60以上の数を表すことはできない。
また、60歳になると生まれた年の十干十二支に還るため、60歳になることを還暦という。
干支を使用しているベトナムなどでも動物名の振り当てはあるが、猫や山羊、豚など日本と異なる動物名が出てくる。

【質問】
・選択肢②は、60以上だと60を含むので61以上の数を表すことができない、でなければおかしくありませんか?
・解答は②となっていましたかが、60以上には60も含むのではないでしょうか?

【回答】
ご指摘いただいたとおり、「60以上」は間違いで、正しくは「61以上の数を表すことはできない」となります。
正答がない問題となりますため、全員正解といたします。

■2級・問20

【問題】
アミノ酸や核酸などの有機分子には、D型とL型がある。地球の生体はL型のアミノ酸だけを使っている。これについて述べた文で間違っているものはどれか。

①化学合成するとL型の方がD型より倍以上生成されやすい
②生体はD型のアミノ酸を吸収することはできない
③生体はD型の核酸のみを使っている
④生体の核酸は片方の型だけが使われることで二重らせん構造がとれる

【正答】

【解説】
アミノ酸や核酸などの有機分子を化学合成すると、L型もD型も等量が生成される。L型とD型はそれぞれ同じ型のものが結合して、より複雑で巨大なタンパク質やDNAを作っている。なので、L型のアミノ酸でできた生体は、L型のアミノ酸のみが使用できる。D型が来ても使えない、すなわち吸収できないのである。
ただ、そうなら、D型のアミノ酸ばかりの生体が半分あっても不思議ではないが、それはほとんどない。その理由として考えられているのが、アミノ酸は特定の円偏光した光の元では、片方の型ばかりが生成される性質があり、そういう環境があったことは考えられる。ただ、地球上ではそれは考えにくいので、宇宙空間でそうした環境があり、そこでできたL型アミノ酸が降ってきて、地球に生体を作ったという説もある。

【質問】
正解は①となっておりましたが、②の「生体はD型のアミノ酸を吸収することはできない」の記載も実際は間違っていて、生体はD型アミノ酸を吸収できるとの研究の事実が多くありますので、②も正解にすべきと考えます。この根拠については、実際に生体はD型アミノ酸を吸収しているとの研究が数多くございます。

【回答】
当該問題については、生命科学分野の学識経験者を交えて天文宇宙検定委員会で議論を重ねました。結果、最新の研究知見では、生体内のD型アミノ酸の存在は広く認知されている事実であり、その機能について研究が進められているのが現状であるとの見解に達しました。よって、選択肢として挙げた「②生体はD型のアミノ酸を吸収することはできない」を正しいと断じることが困難であると判断し、当該問題については、①と②を正答といたします。
ご指摘いただいた内容については、次回の改訂時に参考にさせていただきたく思います。

■2級・問39

【問題】
宇宙線についての記述のうち、間違っているものはどれか。

①宇宙空間を飛び交う高エネルギーの電磁波である
②超新星残骸や銀河中心、太陽などから発せられている
③地上での被曝線量(自然放射線量)は、1年間で約2.4ミリシーベルトである
④国際宇宙ステーションに滞在中の宇宙飛行士は、1日あたり平均して地上での約半年分を被曝する

【正答】

【解説】
宇宙線は宇宙空間を飛び交う陽子やアルファ粒子、リチウム、ベリリウムといった高エネルギーの粒子線である。

【質問】
正解は①となっておりましたが、③の「地上での被爆線量(自然放射線量)は、1年間で約2.4ミリシーベルトである」の記載は間違っているとして正解にすべきと考えます。日本国内での被爆線量(自然放射線量)は1年間で約2.1ミリシーベルトと環境省の下記WEBサイトの資料で記載されております。
①の「宇宙空間を飛び交う高エネルギーの電磁波である」が間違いで正解となっておりますが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の資料によれば、「実際、宇宙放射線(もしくは、宇宙線)と呼ばれる。その中には地上では通常存在しない種類の放射線も多く含まれる。専門的に詳述すれば、宇宙放射線は宇宙環境に存在する電離放射線であり、X 線やガンマ線等の電磁波の他、陽子、中性子、電子、アルファ線、重粒子等の粒子線からなる」と記載されております。宇宙線にはX線、ガンマ線等の電磁波が含まれるとなっておりますので、①は正解ではないと考えます。

【回答】
(1)選択肢③について
公式テキスト(P.132)掲載の「地上での被曝線量(自然放射線量)」は、「約2.4ミリシーベルト」と明示しておりますとおり概数であり、環境省の提示する数値に明瞭な差異があるものではございません。したがって③を間違い(正答)とはできません。
(2)宇宙線について
公式テキストでは、「宇宙線は、宇宙空間を飛び交う高エネルギーの粒子線のこと(P.132)」と解説しています。ご提示いただいたJAXAの宇宙線に関する見解にもあるとおり、宇宙線とは、X 線やガンマ線等の電磁波の他、陽子、中性子、電子、アルファ線、重粒子等の粒子線からなるものととらえれば、選択肢「①宇宙空間を飛び交う高エネルギーの電磁波である」は、誤った記述と解することができますので、正答は①のみといたします。

3級テキスト【2021年~2022年版】「天体の時刻」への質問&解答

『天文宇宙検定公式テキスト3級≪2021-2022年版≫』の

2章p32の記述内容について、ご質問をいただきました。

以下に回答いたします。

【質問】

3級公式テキストP32の平均太陽時と恒星時の変換のところですが、

「回帰年= 365.2422 平均太陽日

= 366.2422 恒星日

になる。

上記のことから、ある時間間隔を恒星時で測った値と平均太陽時で測った値の比1 + μは、

1 + μ= 1 平均太陽日/ 1 恒星日

= 366.2422 / 365.2422

= 1.0027379」

下から2行目で、平均太陽時と恒星日がなぜ逆になるのかわかりません。

【回答】

テキストの式ですが、1式と2式の間が省略されているのでわかりにくくなっていました。

内容は、恒星時のほうが太陽時より、1日約4分ほど進みが早いということです。

 

1+μ=1平均太陽日/1恒星日・・・・・・1式

=366,2422/365.2422・・・・・・2式

=1.0027379・・・・・・・・・・3式

 

とテキストで表現されていますが、

1式と2式の間が省略されていてわかりにくくなっていました。

 

テキストにある上記の式の上に、以下の式が記述されています。

 

1回帰年=365.2422平均太陽日=366.2422恒星日   ……………… (1)

するとここから

1平均太陽日=(366.2422/365.2422)恒星日 ……………… (2)

と表すことができます。

 

つまり、(2)から1平均太陽日=(366.2422/365.2422)恒星日ですので

これを1式に入れると

=(366.2422/365.2422)恒星日/ 1恒星日 (3)

この両辺を1恒星日で割ると

=366.2422/365.2422

=1.002739

となります。

 

(3)が省略されていたので、数値が逆ではないかと思われたかと思います。

 

1回帰年は,地球が太陽の周りを1周する時間で,1回帰年=365.2422太陽日 となります。

暦の1年には端数はないので,暦では,およそ4年に1回(正確には,400年に97回)うるう日を入れて,年と日のずれを調整しています。

 

次に,1恒星日(恒星が南中して,次に南中するまでの時間)は,

1平均太陽日(太陽が)よりおよそ4分短い)≒23時間56分(平均太陽時で測って)です。

およそ4分短いのは,地球の公転運動のため,

平均太陽が,地球が自転している間に黄道をおよそ1°ほど東に移動するため,

1平均太陽日のほうが1恒星日よりおよそ4分ほど長くなります。

 

これが,1年間(1回帰年の間)続くと,

太陽に対して365.2422回回転することになりますが,

恒星に対しては,公転により1回転分が加わり,

(365.2422回+公転による1回分)=366.2422回回転することになります。

したがって,1回帰年=366.2422恒星日となります。

 

恒星時の方が早く進みます

(太陽時に比べて1日におよそ4分;より正確にはおよそ3分56秒),

また、その進む割合を 1+μ で表します。

 

具体的なμの計算方法は,1日(24時間)あたりおよそ 3分56秒 進むので,

24時間3分56秒(太陽時)を24時間(1太陽時)で割ることで計算できること

(ここでは太陽時で表していることになりますが)

第13回天文宇宙検定 受験者データおよび講評

2022年5月29日に開催した第13回試験について、合格率・平均点などの受験者データと、検定委員会による講評をアップしました。
「第13回天文宇宙検定解答速報」と合わせてご覧ください。(第13回解答速報の公開は終了しました)

第13回天文宇宙検定(2022年5月29日開催)

●最年少受験者
1級・準1級 10歳
2級 7歳
3級 7歳
4級 5歳

●最高齢受験者
1級・準1級 73歳
2級 89歳
3級 75歳
4級 67歳

●受験者男女比率
1級:男性 67.5%、女性 32.5%
2級:男性 67.4%、女性 32.6%
3級:男性 46.4%、女性 53.4%
4級:男性 53.4%、女性 46.6%

●合格率
1級:3.9%
2級:48.7%
3級:71.6%
4級:81.0%

●最高得点
1級:77点
2級:96点
3級:97点
4級:98点(2名)

●平均点
1級:47.7点
2級:67.3点
3級:67.1点
4級:70.8点

○第13回天文宇宙検定講評

■4級
今回の4級試験の合格率も前回同様に80%を超えた。10歳未満と10代で4級受験者の5割を超え、親御さんと家族で受験されるほほえましい風景も馴染みのものとなってきた感がある。合格率だけをみると、10歳未満では7割を切っており、小学校低学年にはなかなか手ごわい試験であることには変わりはないように思われる。受験者の男女比は今年も見事にほぼ半々であった。

さて、4級試験で正答率が9割を超えた問題は1以下の2問だけであった。
【問3】日本において、1年のうちで一番夜が長い日を問う問題(正答率93.2%)。正答は「冬至の日」。祝日になる春分・秋分の日に対し、夏至・冬至は日常生活でなじみの薄い日かと思われるが、4級では頻繁に出題される定番問題ゆえか、高い正答率となった。

【問13】まっすぐうでをつき出だして、じゃんけんのグーをしたときのにぎりこぶしの角度は約何度か?という問題(正答率90.1%)。正答は約10°。試験問題にも図が添えられているが、『4級公式テキスト』では、星空観察をするときに便利な手を使って角度を測る簡単な方法をいくつか紹介している。これを知っていれば、キャンプなどで友だちに星座を教えるのも「こぶし1個分(10°)上の星」などと教えられる。

4級で唯一、正答率が2割を下回った問題は以下の問題。
【問22】宇宙人へのメッセージとして、男女の絵がえがかれた金属プレートをつけて、今も宇宙を旅している探査機の名前を問う問題(正答率17.3%)。正答はパイオニア10号。4級は10代の受験者が過半数で、50年も前に打ち上げられた探査機の名前は混同しやすいのか、回答は割れてしまい、正答率が低かった。

そのほか正答率が低かった問題としては、【問30】太陽の自転速度について正しいものを選ぶ問題(正答率34.7%)。正答は北極・南極付近で約30日、赤道付近で約25日。太陽が巨大なガスでできているので、赤道付近の方が回転が速いことを理解していれば正解をみちびくことができる。

次に正答率が低かったのは【問19】プレアデス星団などの散開星団についての正しい記述を選ぶ問題(正答率44.9%)。正答は、「星雲のなかでいっせいに生まれたきょうだい星たちである」。すばるという名前でも有名なプレアデス星団は比較的若い星々がいっしょに生まれたきょうだいであると知ってみれば、ただ『きれいだなぁ』とみるだけで終わるより感じ方も違ってくるのではないだろうか。すばるは、肉眼でもぼんやりと星が集まっているのがわかる星団。星空がきれいなところへ冬に出かける機会があったらぜひ探してみてほしい。さらに、双眼鏡でみると星がぎゅっと集まって輝いているのをとらえられる。プレアデス(すばる)については美しい姉妹のギリシャ神話も有名。オリオンのわがままぶりが描かれているお話のひとつだ。興味があればぜひ読んでもらいたい。

■3級
前回、前々回と80%前後であった合格率が、今回は70%前半まで下がった。今回は10代・20代の受験者が5割を超え、例年、合格率の高い実年層の受験者が少ないという受験者構成が影響したのかもしれない。10歳未満の合格率は52.4%、10代の合格率は58.4%と低調であった。3級受験者の男女比は女性が若干高めであることは変わらなかった。

正答率が9割を超えた問題は、次の3問。
【問12】月がどのようにしてできたのかについて、現在、一番有力とされている説を問う問題(正答率94.6%)。親子(分裂)説、捕獲説、双子説、巨大衝突説など数ある中で、巨大衝突説が最有力とされている。しかし、近年は複数衝突説なども有望視されているそうだが、謎は多く、今後の論争の行方が注目される。

【問44】皆既月食中の月が「赤い月」となるのはなぜか(正答率92.0%)。正答は、「地球の大気を通過した太陽光に照らされるから」。地球大気を通過する際に太陽光の青い光が散乱され、残った赤い光が照らすからであるが、その際、月から地球をみると地球による日食がみられるという。

【問17】1984年公開の小松左京原作の映画『さよならジュピター』のジュピターとはどの天体かを問う問題(正答率90.9%)。惑星のさまざまな言語での呼び名については3級で学ぶが、身の回りを見わたすと、会社名・化粧品名・アニメキャラクターなどいろいろなものにその名が冠されていることに驚くだろう。

次に、正答率が3割を下回った問題は以下の3問であった。
【問34】平均太陽日と恒星日は、1日につき、何分の違いがあるか(正答率20.2%)。正答は、④平均太陽日が恒星日より約4分長い。ほんのわずかの差であるが、近くにある太陽と遠い恒星のどちらを基準にするかで生まれる違いである。3級は2級に比べて計算問題はあまり出題されないが、天文用語やその用法などについての設問が時折出題される。今回の場合、問34がそれに該当するが、例年、この種の問題は正答率が低い傾向にある。

【問50】世界に残る創世神話のうち、世界の始まりは卵のような形であったとしている神話はどれか(正答率23.2%)。正答は中国の神話。世界にはさまざまな創世神話があり、個性的でユニークな世界観を知れば知るほど、古代の人々の想像力には感心させられる。一方で、世界の最初は混沌とした状態であったというのが、世界中でお定まりである点もなんとも面白い。神話の魅力を伝える本は数多いのでぜひ一度手に取ってみていただきたい。

【問22】プロクシマ・ケンタウリ星のプロクシマの意味を問う問題(正答率24.5%)。この星が、3重星であること、太陽から最も近い恒星であることを覚えていれば、また、恒星の略称の付け方の規則性を理解していれば、選択肢が狭められていくだろう。

今回の試験では、全員正解となった問題が1問発生してしまった。受験者のみなさまにはお詫び申し上げます。

【問31】2021年12月25日に打ち上げが成功した宇宙望遠鏡の略称を問う問題は、テキストに未掲載であったため、全員正解とした。JWSTは1兆円以上をかけた一大プロジェクトで、その成果として2022年になってその撮像画像を見られるようになった。専門家の予想をしのぐ画像の鮮明さは、これから我々にどのような世界をみせてくれるのか楽しみである。

■2級
2級の出題問題の水準は、高校地学で学ぶレベルであり、この2、3年の合格率は約38%である。
今回の合格率48.7%は過去3番目に高いもので、第1回の56.4%に次ぐものとなった。受験者層は10代(23.8%)、20代(27.0%)で過半数を占め、50代(14.3%)、40代(12.6%)がそれに続く。合格率をみると、60代以上の層が5割を超えている(60代51.4%、70代62.5%、80代以上66.7%)。平均点は67.3点で、得点分布は70~79点が24.5%と最も厚かった。最高得点は96点で、意外にも2級試験では満点を獲った方はまだいない。

(第13回2級試験の合格率は、「過去2番目に高い」ではなく「3番目に高い」の誤りで、第6回の63.8%、第1回の56.4%に次ぐものでした。訂正してお詫び申し上げます。2022/10/26更新)

正答率が高かった問題をみてみよう。

【問1】宇宙の階層構造において、サイズの大きい順に並んでいるものを選ぶ問題(正答率95.7%)。混乱を招くような選択肢はない素直な問題であった。

【問10】図中に示される領域名を選ぶ問題(正答率94.3%)。図とは公式テキストに掲載されている「太陽系とグリーゼ581のハビタブルゾーンの比較図」。親星の質量に応じて、水が液体として存在できる領域を表したもので、ハビタブルゾーンを視覚的につかめるように作図されている。地球の位置が奇跡的なものであると感じさせる印象的な図でもあり、正答率も高かった。

【問7】写真の銀河のタイプを選ぶ問題(正答率93.2%)。公式テキスト掲載の「ハッブルの音叉型分類」の図を思い浮かべられれば、写真の銀河のタイプが分類できる。視覚的に銀河をおおまかに分類するというおなじみの図からの出題とあって正答率が高かった。

【問18】古い天体観測の記録の文献の抜粋からそれぞれどのような天体現象を表しているか正しい組み合わせを選ぶ問題(正答率90.4%)。文献はすべて漢字なので一見すると難しそうだが、歳星が木星を指すことと、客星が彗星や新星など突然現れた星を表すという知見があれば正答にたどり着ける。

【問2】太陽の黒点が、周囲の光球よりも低温になっている理由を問う問題(正答率90.0%)。これは強い磁場の影響で熱の輸送が妨げられているためで、黒点が生まれる原因とも関連して記憶されていれば、他の選択肢が誤りであることに気づくことができるだろう。

正答率が低かった問題は、【問54】さまざまな星のスペクトルの図から、486 nmの波長でみられる強い吸収線が何かを問う問題(正答率14.3%)。波長の長いものから順番に、Hα線、Hβ線、Hγ線、Hδ線と水素原子のつくる吸収線は目立つ。図でも左から順に縦に暗線が見て取れる。正答に辿り着くには、それぞれの波長が何nmかを把握している必要がある。

【問46】現在その温度がおよそ3 Kである宇宙背景放射のピークの波長はどの程度か問う問題(正答率23.0%)。そもそも宇宙背景放射とは、インフレーション宇宙の証拠ともいわれているもので、宇宙のどの方向からも同じ強度で届く電波のこと。あらゆるものはその温度に応じた光を放射しているが、かつての高温高密度の状態から、3Kまで冷えた現在の宇宙ではその波長は1㎜程度の電波として観測されている。

【問14】HR図から主系列星の光度Lは表面温度T のだいたい何乗に比例すると読み取ることができるか問う問題。ステファンボルツマンの法則(星の光度Lは、表面温度Tの4乗と表面積の積)から導くか、グラフに線を引いて概算から導くかによるが、日常で用いない桁数の大きな計算に戸惑った方が多かったようだ。

【問26】惑星状星雲などのスペクトル中に見つかった未知の輝線は、後にどのような理由による輝線であるとわかったか(正答率25.3%)。発見された当時に知られていた元素からの輝線では説明できなかったことから、未知の元素ネビュリウムを想像した先人たちの予想が外れたという科学史の知見を問う問題であった。

最後に、【問8】日本の律令制における陰陽寮の漏刻博士が何を担当していたかを問う問題。本問は公式テキストに漏刻博士の業務内容についての記述がなかったため、全員正解となった。受験された皆様にはお詫びを申し上げます。

■1級・準1級
1級受験者の特徴として長らく挙げられたものに、受験者の多数を男性が占めるというものがあるが、今回は女性受験者が3割を超え、徐々に女性の受験者が増えつつある感がある。1級の試験内容は大学の講義レベルで専門性が高く、過去11回の試験の平均合格率は約4%。大学院レベルほど難易度は高くないのだが、出題範囲が非常に広範かつ多岐にわたる。そのため、複数回挑戦されて時間をかけて合格された方もいらっしゃる。さて、今回の1級試験についても受験者層が厚いのは、40代以上であった(40代20.8%、50代23.4%、60代19.5%)。点数分布をみてみると、40~49点にピークがあった。今回の合格者を年齢別にみてみると、1級は50代が66.7%を占めている。準1級の合格者も40・50代(40代28.6%、50代28.6%)が多い。この傾向は例年通りであった。1級の平均点は47.7点であった。これは過去11回の試験のほぼ平均点でもある。

出題問題を見てみよう。正答率が8割を超えたものは3問。
【問2】陽子と中性子を繋ぎ止めて原子核をつくっている力を問う問題(正答率87.0%)。正答は「③強い力」。1級受験者にはやさしかったようで、正答率はさすがの87%と高かった。

【問35】8つの客星の記録が残されている日本の中世の文書を問う問題(正答率85.7%)。正答は藤原定家の日記『明月記』。かに星雲の超新星爆発に関する記述の精確さについては、『公式テキスト2級』でも取り上げている。現代に残る貴重な天文資料として名を馳せるだけに、こちらも高い正答率を記録した。

【問18】小惑星探査機「はやぶさ2」の現状について問う問題(正答率83.1%)。時事問題は1級試験問題で毎回数問出題される。正答は、「地球に帰還するカプセルを分離した後、新たなる探査に向かっている」で、まず2026年に2001 CC21をフライバイによる観測を行い、その後、2031年に小惑星1998 KY26にランデブーして近接探査を行う予定。時事問題対策としては、天文学や宇宙開発関連のニュースに耳目を開き情報収集に努めていただくほかない。

【問33】太陽系形成過程を表す4点の概念図から、雪線を境界とした構成分類の違いを問う問題(正答率83.1%)。『理科年表』にも掲載されているおなじみの図からの出題でもあり、比較的容易であったとみられる。

正答率が2割以下と低かった問題は、以下が挙げられる。
【問7】火星の衛星フォボスとダイモスの記述で誤っているものを問う問題(正答率13.0%)。NASAの探査計画でにわかに注目を集める火星の衛星であるが、ダイモスの方が先に発見されたという事実も、その他の知見もあまり知られていなかったようで、回答は見事に散ってしまい正答率が低くなった。

【問26】ある近接連星のロッシュポテンシャルと星の形状を表した図から、この近接連星が何型に分類されるかを問う問題(正答率11.7%)。ロッシュポテンシャルについては過去にも数問が出題されているが、その際の正答率を振り返ってみると本問がもっとも難易度が高かったようだ。1級は公式参考書として『極・宇宙を解く』が指定されており、本問もそこからの出題であった。出題問題のおよそ4割程度は参考書の記述を出題範囲としているので、理解が及ぶまでの読みこなしをして臨んでいただければと思う。

■総括
天文宇宙検定公式テキストには、われわれの住まう宇宙について、基礎的事実から最先端の知見まで散りばめてあるが、受検者のみなさんは公式テキストを楽しんでいただけているだろうか。文科省の指導要領に縛られた学校現場の教科書とは違って、面白くない内容は無理に載せていないし、新発見などは割と早くに掲載できるのが利点だと考えている。
さて、コロナ禍および年2回開催となって3年目に入ったが、受検者数は堅調で(というより1年あたりではかなり増加している)、合格率も数年単位でみれば全体的にやや増加傾向にあるようだ。受験者を選別するための入学試験と異なり、本検定は受検者のみなさん一人ひとりの“学び”を確かめてもらうための試験なので、合格率が少しでも上がると主催者側も嬉しい気持ちになる。とはいえ、1級合格者は相変わらず少ないが、これは致し方ない面もある。1級講評にもあるように、小中高(4級から2級)レベルに比べて、大学レベルの内容は格段に難易度が高くなるためだ。まず、宇宙“物理学”などがふんだんに必要になって質的に難しくなり、さらに扱う範囲が広く深くなって量的に膨大なものになる。とはいえ、1級参考書『極・宇宙を解く』は実際にいくつかの大学で教科書として使用しているものなので、1級や準1級に合格された方々は大学の天文専門課程を出たぐらいの力を付けられたということだ。1級に限らず、上のクラスへの挑戦を続けていただきたい。
最後に、総括とは少し話が逸れるが、検定委員会内部でここ数年議論になっているのが、<即応性>の問題である。公式テキストは2年ごとに改訂しているが、ということは、改訂後2年間の間に興味深い発見や知見があっても(1級を除き)出題できないわけである。とくに年2回開催となると、うち、3回ぐらいの試験で出題ロスが起こりうる。そのため、時事問題に限って、テキスト範囲外からの出題を認めるか、やはりテキスト範囲に限るかなどが議論されている。折衷案としては、HPなどで時事問題の解説をして出題範囲に含める方法もある(でも、ちょっと大変かも)。受験者のみなさんの忌憚ない意見をお聞かせ願えればありがたい。

2022年9月吉日
天文宇宙検定委員会