第18回試験問題へのご質問に対する回答
第18回試験問題へのご質問に対する回答
第18回試験問題について、ご意見・ご質問を頂戴しまして、ありがとうございます。
以下のとおり、ご質問へご回答申し上げます。
質問者からの文章は、一部を割愛させていただきました。ご了承ください。
■2級 問1
【問題】
ブラックホールの「事象の地平面」はどのようになっていると考えられるか。
① 弾力のあるゴムの膜のようになっている
② 液体の表面のような状態になっている
③ 周囲と特に変わらない
④ 固い地面のようになっている
【正答】
③
【解説】
ブラックホールは、光が脱出できない、すなわち脱出速度が光速を超える重力となる「事象の地平面」の内部をいうが、
事象の地平面は空間における境界面であって、物質的な境目ではない。
【質問】
以下のように考えられると思いますが、如何でしょうか?
提示の正答と悩みに悩んだ末、①を回答としました。
「① 弾力のあるゴムの膜のようになっている」というのは、
ブラックホールが周囲の時空をどのように歪めるかを比喩的に表現したものと考えた。
ブラックホールの強大な重力により、時空がゴム膜のように「曲がる」と考えられる。
特に事象の地平面では、この歪みが無限大に近づくため、
観測者にとって脱出不可能な境界として描かれる。
この比喩は一般相対性理論で説明される現象と一致している。
「③ 周囲と特に変わらない」は誤り。
事象の地平面は、周囲の時空とは大きく異なる。
ここでは時空の歪みが極端になり、他の場所とは全く異なる重力場が形成される。
結論:ブラックホールの事象の地平面は、「弾力のあるゴムの膜のようになっている」と考えるのが最も適切。
この比喩は、重力が時空をどのように歪めるかを理解するための視覚的な説明として広く使われている。
よって①が正解。
如何でしょうか。教科書と模範回答から、お示しの正答も分かりはするのですが。
ご教示ください。
【回答】
ご質問をいただき、ありがとうございます。
>「③ 周囲と特に変わらない」は誤り。
>事象の地平面は、周囲の時空とは大きく異なる。
>ここでは時空の歪みが極端になり、他の場所とは全く異なる重力場が形成される。
ここを大きく勘違いされているように思います。
ブラックホール(BH)の事象の地平面は、数学的には座標特異点に近いものです。
たとえば、地球表面の座標を経度・緯度で表したとき、
北極点・南極点は、すべての経線が集中する特異座標ですが、
球面上で考えた時に、北極点・南極点は、他の地表面と変わりません。
BHの事象の地平面も、“シュバルツシルト座標”というもので表すと特異性がありますが、
クルスカル座標など他の座標系で表せば、とくに特異性は現れません。
2級テキストではBH時空を表す種々の座標系まで踏み込めませんので、
BHの「事象の地平面」は周囲と特に変わらない、という事実のみ記載しています。
ちなみに、BH中心の特異点においては、
>ここでは時空の歪みが極端になり、他の場所とは全く異なる重力場が形成される。
上記のとおりです。
■2級 問35
【問題】
図は、太陽の2倍の質量をもつ恒星の、主系列星から赤色巨星に進化する道筋をHR図上に描いたものである。
Bの位置に進化したときの半径は、Aの位置にいたときのおよそ何倍になっているか。
① 10倍
② 25倍
③ 50倍
④ 100倍
【正答】
②
【解説】
AとBの位置での光度と半径、表面温度をそれぞれLA、RA、TA、LB、RB、TBとすると、
ステファン・ボルツマンの法則から、
LA=4πσRA2TA4、LB=4πσRB2TB4
が成り立つので、
LB/LA=(RB/RA)2・(TB/TA)4
と表せる。ここでσはステファン・ボルツマン定数である。
これから、
RB/RA=√(LB/LA)・(TA/TB)2
となる。図から、Aの絶対等級はおよそ2等級、Bの絶対等級は-2等級で、およそ4等級の等級差となる。
5等級で明るさは100倍違うので、4等級ではそのおよそ2.5分の1となり、およそ40倍違うことになる。
したがって、LB/LA=40となる。
また、TA=8000 K、TB=4000 Kなので、
RB/RA=√40×(8000×4000)2
=2√10×22~2×3×4=24
となり、最も近い値である②が正答となる。
【質問】
2級問35の解答解説について質問があります。
TA=8000 Kとなっていますが,9000 Kの間違いではないでしょうか。
また,そのあとの数式は
√40×(9000/4000)2≃32
ではないでしょうか。
この場合,確かに25倍が最も近いですが,迷った結果,50倍を選んだ友人がいます。
【回答】
この度はお問合せいただきありがとうございます。
ご指摘いただいたとおり、2級問35につきまして、
解答速報の解説に間違いがございました。
お詫びして訂正いたします。
誤:
また、TA=8000 K、TB=4000 Kなので、
RB/RA=√40×(8000×4000)2
=2√10×22~2×3×4=24
正:
また、TA=9000 K、TB=4000 Kなので、
RB/RA=√40×(9000/4000)2
=2√10×92/42~2×3×81/16~30
なお、選択肢の値が不適切であり、②30倍、③60倍とすべきでした。
そのため、当該問題については選択肢②と③を正答といたします。
この度は貴重なご意見をいただき、まことにありがとうございました。